もはやその段階ではない

guruguru brain桂田氏と会話。昨今の音楽の聴かれ方について。spotifyの登場でダウンロード販売の終焉すらも見えてきたとのこと。個人消費という観点では音楽を聴くことは無料であることが当然になってきたと思う。ビジネスとしての音楽はまさに特異点を迎え…

生まれつき体験したことを激しく感じ過ぎる。よい体験も、反対に不快な体験も記憶に強く刻みつけすぎてしまうのはどうやら自分の固有の特徴のようだ。それで、自分のなかでは、よい体験というのは、ビデオや写真のように視覚的に蓄積されている。それもかな…

最近の世の中の状況をみると、人間が世界を呪うことで、世界が呪いの重みに耐えかねているように感じる。 世界の理不尽や不条理に生身で晒されて怒りを抱えた個人がこの世界は生きるに値しないと考えたとき、世界を壊そうとするだろう。 かつてもそういう呪…

最近はレコーディングされた音源の編集でせっせとスタジオに通っている。それで音のイメージを話すときに、自分の場合どうしても抽象的な言葉になってしまうのだけれど、それを理解してくれるのでとても楽しい。理解というのは音のイメージを理解してくれる…

以前働いていたレコード店から依頼があってトークとライブをやった。働いていた頃は、自分がやっていた音楽と、レコード店で働くということがあまり関わりがあるように思えず自分がミュージシャンであるということは傍に置いて店に出ていたように思える。し…

最近あまり起伏のないようなものの録音を始めた。こういうのを聴くのは好きなのだけれど、自分の作っているものの手ごたえが殆ど無く、だいたいは死ね!とかクソだわ、とか酷い悪態を自分について終了する。たくさんのアイデアを整理する方法が確立されてい…

現状の社会情勢を顧みれば、傲慢と卑屈の反復を繰り返す近代以降のこの国のすがたが立ち現れる。 昨今目にする大小の弱者差別には目眩すらするが、この傲慢は一昼夜で成し遂げられたものではない。結論からいえば、直面する状況の変化によって、元々もってい…

価値

昔の職場であるレコード店で、トークとアコースティックライブをやる機会をもらったので、何を話すかを考えているのだけれど、日本のサイケデリアの今昔、というテーマについて自分に話せることは今にまつわる事のほうが多いに決まっている。そして今は状況…

はじめてのEU&UKツアーに出て今日が6日目。日本とのオーディエンスの違いについて考えると、一概に日本がこうで、海外がこう、というような明確な違いはない。結局は国民性というしかないような気がしている。しかしミュージシャンとしての活動のし易さを考…

8月の現状

guruguru brain/kikagaku moyoの諸氏と久しぶりに会う。彼らの物事への取り組み方や考え方は本当に尊敬に値するだろう。約ひと月のヨーロッパツアーの直後にいくつかのリリースをするようなことは、本当に強い意志と能力がなければできないけれど、その根源…

参院選の総括をラジオで聞いていて刮目。憲法改正ライン3分の2を争点とするのが誤り、民進党内部の改憲派をいれればとっくに3分の2をこえていた。護憲を掲げて戦うのではなく、政策で戦うべきだったと。 もうひとつ、護憲派こそが最大の解釈改憲をしている。…

イギリスのEU離脱のニュースを知ったときは驚きから声をあげそうになった。しかしながらそれがなにを意味するのか、これから何が起こるのか、完全に理解している人は世界中にだれもいないのだが、明らかなのはこれが民主主義のひとつの帰結であるというこ…

ナイーブ

フジロックの出演者が発表されてから、音楽フェスに政治団体を呼ぶことの議論がにわかに盛り上がっているのだが、こうした議論は近代国家としては周回遅れの議論であるように感じる。そもそもロックが政治的であるか否かについてはどうでもいい。営利団体が…

サブカルチャー的なイベントに出演して、改めてそのような表現の需要のされ方について考える。イベントで感じられたのは10年ほど前に高円寺円盤などで盛り上がりつつあった雑多で面白いものを集めたような感覚と共通する、匿名性をもったエネルギーを持った…

以前のノートなどをひっぱり出して読んでみる。詩を書きたいな、と思ったからで当時の情熱のようなものを確認したかった。渡辺一夫の戦時期に詩人に突き付けられた問題などが書き出されている。気が引き締まると同時に影響されやすさみたいなものを感じる。…

映像スタッフと久しぶりに会う。聞くと病気で長いこと苦しんでいたようで、割りとみんな満身創痍なのは何の因果かとも思う。しかしそういうときに、今までどれ程無理をしていたのかと思い返すと同時に、そうでなくてもうまくできるひともいて、自分のことと…

最近スタジオにはいってレコーディングする機会があり、ベーシックなギターを録ったのだけれど、あまりの自分のギターの拙さにあきれ返った。その後エンジニアの方と自分をどのように規定するのか、という話をしているうちに、詩人ではあるけれどやはりギタ…

最近はgypsyのころの古い曲を練習しているのだけれど、ようやくものにしたような感覚がする。思うに自分は過去の自分の仕事を過小評価する癖があって、どんどん違うものを作り続けるのは否定からはいる部分がある。これはなかなか精神衛生上よくない。12年も…

ひとと会話していて、例えば映画の感想なんかで、自分からしたら、どう考えてもその解釈は違うんじゃないか、という意見をたまに聞いたりするのだけれど、果たしてそういう解釈を映画は許しているのだろうかと考える。その映画の作家が許しているかと、映画…

函館

はじめてレコーディングスタジオで、エンジニアといっしょに録音をしようということになった。理由は全てを自分でやることの限界を感じたため。その限界とはどういうものかというと、例えば音色ひとつとってみても、ほとんど無限にあるなかで、自分の理想と…

ある古書店店主と知り合い、最近の古本の動向について聞く。澁澤とかそういった幻想文学の類いはもうかなり値段を下げているそうで、少し寂しい気持ちになる。というのも若い時自分が夢中になり、そこに何か大きな価値を置いていたもの、端的にいえばサブカ…

前述のような現状のシステムがたちゆかなくなることは、システムの変革を推し進める根拠となるのは間違いないのだが、それが顕在化されているとは言い難い。変革を押し止める力となるものは既存のシステムに対する信頼と既存の枠組みから外れた振る舞いをす…

現在突きつけられた問題

このブログは東日本大震災以後二年ほどがいちばんよく更新されていた。それは震災によって突きつけられた問題によって、自己の内面との対峙を否応なしに迫られたためだろうと思う。 ではその問題とは何だったかと一言で言い表せば、「自分が前提としているも…

花に問ひたまへ

さそうあきら「花に問ひたまへ」はわたしの住んでいる多摩川のそばの駅周辺が舞台になっている。最初のページをひらいたときにすぐそのことに気づいて嬉しくなった。自分が美しいと感じたものを作者も見て、作品にとりあげたことを誇らしく感じた。この川辺…

アナログレコードのリリースに伴って答えたインタビューがあった。こんなふうに自分の言葉を求められるようになったことは変化とも思える。現在は夏のあいだに完成させた2枚のアルバムのリリース元を探している段階で、これはうまいぐあいにいっていない。…

批評空間

音楽批評の存在については自分の経験もあって否定的だったのだが、最近考えが変わりつつある。5年ほど前にセカンドアルバムを出したとき、有名な音楽評論家に文章を依頼した。それが必ず自分たちの作品にとって有用な、新たなリスナーを生むだろうと思ったか…

台湾の有志からHeavenの歌詞を教えて欲しいとの連絡があり、代わりに英訳と中国語訳をお願いしたところ、驚いたことに翌日には数曲を訳して送ってくれた。 gypsy houseのアナログリリース以降、台湾や上海からの連絡が多いが、彼らの熱意に影響されて作業に…

アート

去年の今ごろによく路上で酒を飲んでいた相手と久しぶりに会う。 彼はコンテンポラリー・アートをやっているのだけれど、日本の状況にたいする見解は共通するところが多い。 オリンピックのロゴの問題に関する反応ひとつとってみても、この国のひとたちの、…

演奏

小学校を卒業するまでピアノを習っていた。親が言うには自分からやりたいと言ったらしくなかなかやめさせてもらえなかったので、練習の前日に渋々練習をする。上の兄はあまり文句を言わず聴いてくれたが、自分の下手さが嫌だった。小学校を卒業するとき、特…

年の離れた友人のこと

その人と初めて会ったのは当時働いていたレストランで、ずいぶんおっとりとした、育ちのよさそうな人だな、という印象だった。仕込みの時間の短い間だけ、周囲に気づかれないように会話しなければいけなかったのでそれほど多く話した訳ではない。けれども大…